世界
2018/02/12
声が好きだし、顔も好きだし、それから反応も好きだし、性格も好きだし、とりあえず嫌いなところが見つからない。
口にしたことはないけれど。
ザップさん、という声に顔を上げた。「おー。おせーよ」「ザップさんが早すぎなんすよ」そう言ってレオナルド・ウォッチがこちらにとことこと駆けてきた。スクーターに座ったままのザップ・レンフロは立ち上がると、ポイとその辺に葉巻を投げ捨てる。ちょっと、とレオは顔を顰めた。
「うちの駐車場にポイ捨てやめてくれませんかね。ってゆかポイ捨てはダメですよ」そう言ってわざわざ葉巻を拾ったレオは、駐車場の隅にある灰皿にそれを捨てた。彼の後姿を睨みながら、ザップも顔を顰めて腰に手を当てる。
「うるせーな一々。早よ乗れ」
折角迎えに来てやったのによ、と言ったザップに、それはまあ、と言いながらレオがこっちを振り返った。
後ろのネオンサインがレオの髪を照らしている。
「…あざっす。ザップさん」
そう言って苦笑した後輩の顔を見るのもザップは好きだった。
嫌いなところがないんだよな、とぼんやりしながらテレビ画面を見つめているザップのところに、レオがキッチンからやってきた。「そんでどーすんすか。どっちにします?」「……ゴルゴンゾーラ」「はいはい」あっためてきます、と言いながらレオは再び備え付けのキッチンの方に戻っていく。ピザを温めるのだろう。その後姿を見ながら、なんかなあ、とザップは思った。
――――俺ばっかこーいうこと考えるみてーでムカつくんだよなー。
そう思うのも何度目なのか分からない。今まで人を好きになったことは沢山あったし、それから口説いてセックスしてがザップの常套だったのだが、今回に限ってどうもうまくいかない。ザップはこの後輩が色々な意味で好きで好きで仕方なかったのだ。
だからとっくに好きだと言っているし、そして運がいいことにレオの方もザップが好きだったらしい。真っ赤な顔をしながら俺もですとぼそぼそ言ってきたレオを抱き締めるのにそんなに時間は要らなかった。
――――が、このレオナルド・ウォッチこそが曲者だった。確かに今までもそうだったが、付き合うようになったからと言って大してレオが素直になるとかデレるとかそういうことは殆どなく、むしろ怒られることが増えた。人の話聞いて下さいよ、とかこんなところで何考えてるんですか、とか主にそういうことで怒られる。ただザップもそれを聞き入れたことはないから同じかもしれない。
チン、といういたく分かり易い音の後、あちちち、と言いながらレオが温めてきたらしいピザを持ってこっちに戻ってきた。「あつつつつザップさんザップさん手、早く手、手ぇ出して」「無計画やのー」ホントに、と言いながらびゅんと血を伸ばしてピザがのった皿を受け取ったので、レオはほっとした様子で息を吐いた。てゆかお前が熱いんじゃ俺もあちーだろーに。そう思いながら、皿をデスクに置く。自分もそうだが、中々この後輩だってザップに対して勝手なのだ。
「…あ、ねーザップさんザップさん。明日休みですよね」
「呼び出しなきゃーな」
俺は、と言いながらベッドに座っているザップの横に、レオがすとんと座ってきた。「俺も休みなんですよ。だから映画行きません?」「映画ぁ?」ヤダよ、と言ったザップに、レオはええー、とちょっと残念そうな顔をした。「ヤですか?」「ヤだよ。くれーしせめーし」大体俺寝るぞ、と言いながら自分を指さしてテレビを見つめたザップに、ええー、とレオはまた同じことを言った。
「そっかぁ。わかりました。んじゃいいです」
「……………………。」
こーいうとこだよなあ、と大して面白くもないテレビ画面を見ながらそう思う。断っておいて何言ってんだ、と各方面から言われそうだが、つまり今のようにあっさりと引かれるところにも何となく不満を覚えている。今日も今日で、ザップがレオの家に来たいと言ったからレオははーいと言ってそれを受け入れてくれただけで、バイト先に迎えに行くと言ったのもザップだ。反対にレオがザップに来てほしいとか迎えに来いとか言ったことは今まで皆無である。だからたまに疑ってしまう。
――――コイツホントに俺のこと好きなんだよな。
そう思って慌てる。レオはそういうことで嘘を吐くような少年ではない。ただそれとこれとはまた話が違うともザップは思ってもいる。よく考えたら告白したあの時しか好きだと言われたことはないような気がするし、その時だって好きだとはっきり言われたわけではない。ただ俺もです、と曖昧なことを言われただけだ。何が俺もです、なんだよと思いながらやっと冷めてきたピザを齧ったザップの横で、レオはごろごろとベッドに転がってゲームを始めた。
「……………………。」
お前もテレビ見てんじゃん、と各方面からやっぱりツッコミされそうだったが、なんかこう、とザップは思いながらピザを齧っている。折角家にいるんだし折角二人きりなんだし普通にいちゃつきたかった。別に二人きりじゃなくてもいちゃついたりしてはいるものの、レオは勿論嫌がるし、ザップもそう言う時のレオを知っているのは自分だけでいいと考えているからあんまりそういうのはしたくない。勿論口にしたことはない。ちなみにレオからは嫌がらせだと思われている。
「ザップさん」
「……おう」
なんだよ、と言いながら振り返ると、レオは起き上がってザップの横にちょこんと腰掛けた。「ここどーやりました?先週やったって言ってたけど」「あ?…いや忘れたわ。先週のことなんざ」「ええ〜?」先週のことなのに、とレオは言って眉間に皺を寄せた。
「頑張って思い出して下さい。ここ進めないと先に行けないんだから」
「だからそれが思い出せねえんだよ。てゆかそーいうのはおめえのが得意だろ」
「なんかこのゲーム微妙に王道とずれててよくわかんないんすよ。思い出してくださいって」
ね、と言いながらこっちを見上げて来るレオの顔は真剣そのものである。「………………。」さっきと食い下がりようが雲泥の差、とザップは思って思わず無表情になってしまった。「?あれ?どうしたんですか」怒ったわけじゃなかったから、レオには驚かれなかったらしい。ただ不思議がられている。
「……べつに。なんでもねーけどともかくそれは忘れた」
「ええ〜」
どーすんのかなあこれ、と言いながらがちゃがちゃゲームをやっている音を聞きながら、なんだか溜息を吐きたくなった。
風呂に、とレオが繰り返したのでそーだよとザップは淡々と言った。「どーせ入るんだからめんどーだろ。一緒でいーじゃねえか」「え…い、いやでも」そう言ってレオは一歩下がった。後ろには壁しかなかったので壁にぶつかっている。「せ、せまいし」「知ってるっつーの」んでも二人くれーならいけるだろ、と言って服を脱ぎ始めた自分を見て、レオは情けない顔をした。
結局あの後だらだらと時を経たあと深夜近くなったので、風呂に入ることになる。普段はシャワーが基本だったが、何となく湯船に入りたくなったのでレオに言って湯を張らせた。確かに俺が家主だけど横暴過ぎる、とぶつくさ文句を言っていたレオは、それでもちゃんと湯船に湯を張ってくれた。んじゃ風呂どーぞと言ってきたレオに、ザップは一緒に入ろーやと言ってみたのである。それが今だ。
「……、え、え〜〜〜っと…でも、そ、そんなの今までやったことないし…」
「んじゃ益々ちょーどいいだろ。初体験っつーやつだ」
ほれ、と言いながらレオの服を引っ張ったので、にゃあとレオは悲鳴を上げた。「わわわわいいですいいですっ。自分でやるから!」そう言って顔を赤くしたのを見る限りでは、たぶん嫌われてはいないのだろう。今更そう思いながら、早よしろよとザップは言ってレオから何となく眼を逸らしてしまった。
先に風呂に浸かってぼーっとしていたが、レオがいつまで経っても入ってこない。何してんじゃアイツは、と苛々して風呂場の入り口を振り返ったところでやっとドアが開いた。「……お、お邪魔します…」「おめえの家だろ」何言ってんだか、という顔をしたザップを見て、レオは物凄く困惑した顔をしながらええと、と言って頬を掻いた。
「や、やっぱしあのー、…せ、狭いし」
ね、と意味不明な顔をしながら言ったレオは、ドアを盾のようにしながらこっちを見ている。つまりまだ風呂場にすら入ってきていないのだ。それを見ながら、いーからとザップは言いながら手招きした。「早よ来い。どーせ出たらセックスすんだから」「せ、…え、す、」するの?と子供みたいな顔をしてレオは言うと、顔をまた赤くさせた。
「するんだよ。俺がしてえんだから」
「………、……そ、…そうですか…」
そう言ってレオは漸くそろそろと脱衣所から風呂場に入って来ると、ばたんとドアを閉じて思っていたよりも速い速度で湯船に入った。ばしゃんという音と一緒にぎゅっと目を瞑った後輩は、ザップの足の間辺りにちょこんとしゃがみ込んでいる。「………もーちょい静かに入れよ」「す、…すいませんね!」こっちは慣れてないんですよ、と言ってレオは顎のあたりまで湯に浸かっている。
「………………別に俺も」
お前と風呂に入るのは慣れてねえよ、と言って後ろからそっと抱き締めると、ひゃあとレオは声を上げた。「……初めてじゃん」そう言った声が物凄く拗ねていたので、ザップは呻きたくなってしまった。そんな言い方をするつもりはなかった。ザップだってこういう時くらいは格好くらいつけたいと思う。
「……、…はじ……、あ、えっと…」
そっか、とレオは言って顔を赤くさせた。たぶん湯船に浸かっているという理由だけではない、とザップでしても気が付く。「……そーだよ」そう言って顎をレオの頭の上に乗せると、えへへ、とレオがちょっとおかしそうに笑った声がする。「…………。」クソ、と脳内で吐いた悪態は勿論レオにではなく自分に対してだ。こんなことでいちいち可愛いなと思うのも、もはや相当だ。
風呂が気持ち良かったのか、レオはへらへら笑ってタオルでごしごしと頭を拭っている。「…おめーそーいうことしてっとまーた髪が陰毛になるぞ。絶滅させんのが難しくなんだろ」「俺を新種の生き物みたいに言わないでください」むっとした様子で振り返ったレオにそう言われたあと、ザップはレオの髪を乾かしてやった。ザップさん髪乾かすの上手いですよねえ、とレオに言われるのは何度目か忘れたが、流石にレオだってどうしてザップがこういった行為が上手いのかくらい知っているだろう。「………………。」妬くとかそーいう、とそこまで考えて馬鹿馬鹿しくなる。やっぱり一々自分ばっかりだ。
レオみたいな人間を知らない。
この街で言うならば、人間以外も加えるべきなのかもしれないが、ともかくザップにとってこの少年は何から何までイレギュラーだった。出会い方もそうだし、性格だって、表情だって、ともかく何だってそうだ。一緒にいると楽しいし、見ていると触りたくなるし、傍にいたいと思うし、隣にいてほしいと思う。声を聞きたくもなるし、手を繋ぎたくなったり、顔を見たくなったり、会いたくなったりする。最初は、そういう感情が一体何なのか分からなくて物凄く戸惑った。ただある日ふと突然気が付いたのだ。あ、そうだ、と思った瞬間口にしていたのだから本当にそれはザップの中から出たくて出たくてたまらない気持ちだったのだろう。好きだ、と言った瞬間びっくりしていたのはレオだけじゃなくて、ザップもだった。
好きという気持ちに限界はないらしい。傍にいても、声を聞いても、抱き締めても、触っていても、顔を見ていても、結局同じだった。好きなのだ。一緒にいることも、隣にいることも、手を繋がれたり、抱き着かれたり、触ったり触られたりするのも好きで好きで仕方ない。ただそれは相手がレオじゃないと何の意味もない。限界どころかどんどん突き進んでいくみたいにレオのことが好きになった。好きになったのにまた好きになるのもおかしい話だったが、レオナルド・ウォッチというのはそういう少年だった。
だから困るのだ。こんな奴絶対みんな好きになるじゃん。そうザップは思っている。笑顔を見るたびに、声を聞くたびに、会うたびに思う。だからセックスしている時は安心する。この顔を、声を、表情を、手付きを、熱っぽさを知っているのは確実に自分だけだからだ。世界中でたった一人。ザップ・レンフロだけの筈だから。
だからきっとあれが他人に知られてしまった時、ザップはその知らない誰かを殺してしまうんじゃないかと思っている。レオの寝顔を見ている時にふとそう思うことがある。絶対に、他人にそれだけは知られたくない。あの熱を帯びた眼も、ザップさん、と舌足らずの声で呼んでくるそれも、全部全部自分だけのものだ。絶対に誰にも渡しくなかったし、奪われたくなかった。
だからたまに少しだけ、ほんの少しだけ不安になることがある。勿論口には一生しないだろうが、レオはレオで別にずっとザップのことが好きなわけじゃないのだ。ザップだってそうだとは言えるけれど、レオ以外を好きになる予定は今のところザップにない。これからもない。レオの一番が最愛の妹だということはとっくにザップの中で当然になっていたが、恐らく次点くらいに自分はいるんじゃないか、くらいには思っている。けれどその次点は入れ替わることができる位置なのだ。指定席である最愛とは話が違う。
だからザップさん、と笑ってこっちを振り返るレオを見ると安心する。その笑顔を見ると、自分が好かれていると何となく分かるからだ。
いつまでなのか分からないなりに。
セックスする時のレオは大抵こっちを見ようとしない。「………おい。おーいてめえ。少しはこっち見ろよ」無理矢理正常位でしているというのに、レオはいまだに目をぎゅっと瞑ってザップを見ない。「い、…いいでしょ…!?だ、だいたいザップさんの顔なんか、毎日見てるんだから…!」これでいいの、と言いながら腕を首に回される。「………。」あっそ、と脳内で打った相槌は物凄く拗ねていた。そーですかそーですか。俺はお前の顔何度見ても飽きねえし何度見てもいーけど。そう思いながらあーそーかよ、と乱雑に相槌を打った。ちなみにこれは初回からずっとこうだ。後輩はこういう時も殆どデレない。
「あ、…っう…にゃぁ…」
「……………、」
これだ、と思いながら息を吐く。この時の声を知ってるのは本当に世界でたった一人、自分だけなのだ。絶対に誰にも聞かせたくないし、誰かが今後聞くことになったら―――なったらその時は分からない。もうこの後輩を誰にも渡したくない。この腕の中から逃がしたくもないし、手放す気もない。何が起きてもそうだろう。
「……なあ」
「は……、え…?はい、…なん、…あっ」
なんですか、とふにゃふにゃした声でレオは言った。「……お前さあ」そう言った自分の声が真剣に聞こえたのかもしれない。レオは珍しくそろそろと少し身体を離してはい、と不思議そうに言いながらザップを見つめた。頬が上気しているのも、目元に涙が浮いているのも、少し額に汗を掻いているそれもザップは好きで好きで仕方ない。本当に、嫌いなところが見つからない。
「……俺より先に死ぬなよ」
そう言ってキスしたせいか、んむ、と後輩は色気がない声を上げた。「ん…っ!?ん、…」むぐむぐとそう呻くような声を上げているそれもザップは好きだった。いつ聞いても、幾ら聞いても飽きない。好きだ。
ちゅっという音を立ててわざと口を離すと、レオは変な顔でこっちを見ていた。「…?ど、…どうしたんですか?」なんかありましたか、というレオのそれに別に、とザップは言って笑った。それを見て益々レオは不審げな顔を通り越した不安そうな顔になる。
「?あの、な…なんか…あったなら言って下さいよ。俺もそんな簡単に死なないし」
「なーに言ってんだクソよえーくせに。ちったーカツアゲ躱せるようになれよ」
「…………あの」
そういうことじゃなくてですね、と言われてちょっと黙った。誤魔化せてないということに気が付いたし、レオもレオで誤魔化される気はないらしい。
「……なんでもねえよ。気にすんな」
そう言って今度は頬にキスをしたが、レオはそれでも誤魔化されなかった。「……ねえ、どうしたんですか。……あの、まさか」もうすぐ死ぬとかないですよね、と言われてザップはきょとんとした。そんな発想はしていなかったし、レオにそう言われるとは思ってもみなかった。
呆気に取られているそれをレオがどう解釈したのかは分からない。ただ、レオは物凄く不安そうな、ともすれば泣きそうな顔であのう、と小さな声で言った。
「…言いませんよね?………し、」
死なないよね、といつもよりも子供っぽい口調で言ったレオがザップの腕をそろそろと掴んだ。「…………。」それにも答えなかったのは、やっぱりまだ驚きが継続していたからで他意はなかった。コイツこーいう顔するのか、とザップはザップで驚いていたのだ。そういう顔をするレオを見たことがないわけじゃない。ただ、自分が死ぬのかという疑いを抱かれてそういう顔をされるわけがないとザップは思っていたのだろう。
「…ザップさん、………やですよ、し、」
死にませんよね、とレオはもう一回言った。「え?」はっとする。だから、とレオが言った声が震えていることに気が付いた。
「……、……死なないで下さいよ。困ります」
「………困るって」
なんでだよ、と言ったのは本当に疑問に思ったからだ。別にレオがザップが死んだからといって泣きもしない冷血漢だとか、そう思っているわけじゃなかった。ただ、本当に疑問に思った。困るという表現のせいだろう。嫌だとか、やめてくれとか、そういう言い方なら分からなくもないが、困るというのはなんだか変な気持ちだ。
レオは今度こそ泣きそうな顔をした。
「……だって俺、………、ザップさんがいないと困る」
「……………だから。なんでだよ」
「なん……、なんでじゃないですよ。当たり前じゃないですか」
そう言ったレオの眼からぱたんと一滴涙が落ちたので少し困った。あんまり泣かれるのは得意じゃない。「だって、……俺はザップさんが好きなんだから」困るんです、と言ったあとレオはぎゅう、とさっきみたいに腕を回して抱き着いてきた。「……、」なんだかまた、返事ができなくなる。
「……死、……死んじゃ困る……」
会えなくなる、とレオは続けた。「…会えなくなるし、触れなくなるし、…………声も、」聞けなくなる、と言ったレオの声は完全に泣き声だったので、ザップはそこでやっとはっと我に返った。
「ば、…だ、だいじょーぶだよバカ死なねえよ!泣くなよ!」
慌ててそう言ってレオの頭をばしばしと叩いたので、痛い痛いとレオは声を上げた。「ちょ、ちょっといきな……、……し、」しなないんですか、とレオはきょとんとした様子で言った。「あたりめーだろ何で俺がくたばんなきゃなんねーんだボケ。この俺を舐めてんじゃねーよ」そう言って顔を顰めたザップを見て、レオはぽかんとしていたが、さっきよりももっとぼたぼたと涙を流し始めたのでぎょっとした。
「だ、わ、おい。なんでそこで泣くんだよ」
「………………、……よ、…よかった……」
死なないんだ、とレオはほっとした様子で言うと、そこでやっと笑った。「…そっかぁ…」えへへ、とレオはまたそこで嬉しそうに笑うと、もう一回ザップに抱き着いてきた。「……………お前俺が死んだら困るのかよ」そう言ったのはなんだか少し照れたからかもしれない。そう言ったザップに、あたりまえでしょうとレオは怒った様子で言った。
「困りますよ。そしたらもう俺誰も好きになれないじゃないですか」
「…………………そーか?」
そう言ってそろそろとレオを離すと、そうですよ、と言ってレオは笑った。「…今後そういう予定ありませんので」「………あっそ」そりゃどーも、とわけのわからないことを言ったあとレオの首に噛み付いた。声を聞きながら、ああやっぱり、とザップは思った。絶対だめだ。この声も顔も身体も何もかも全部自分のものだ。絶対に誰にも渡したくないし奪われたくないし見せたくない。傍にいたしいてほしい。抱き締めたいし抱き締められたいし、好きだし好かれたい。この世界が存在していようがしていまいがどうでもいい。たぶんこれからずっと、ザップ・レンフロの世界はたった一つ。
レオナルド・ウォッチそれだけだ。
終
レオくんがいないと死んでしまうザップさんブームの時に書いた でも多分このレオくんもそうなのでは?
読み返したらすごいいちゃいちゃいちゃいちゃしててびっくりしました こんなにいちゃいちゃしてたら毎日大変では?(周りが)